初めて住宅設計を担当させて頂いて以来、28年間でおよそ500〜600件のご家族と注文住宅についてお話を伺って来ました。その中で、注文住宅に向いてる(?)って言ったらおかしいかもしれませんが、プロジェクトがうまくいくご家族と、またそうでない家族がいらっしゃいます。ここであえて言うべきは、注文住宅は決して『買う家』とは違うと言うことです。『家を買った』と『家を建てた』は、住まいを手に入れると言うゴールは同じでも、そのプロセスは全く違うのです。人は1日に35,000回の決定をしているといいます。『家を買う』は、買うのか買わないのか2つに一つです。もちろんそれに至るまでに沢山の判断はあるとは思います。しかし最終的には、夫婦や家族で二者択一をするわけです。ところが『家を建てる』注文住宅は、ひとつひとつ無数の事柄について、無限の選択肢の中から、一つ決定をしてゆく、まるで宝探しのような作業の連続なのです。私たち建築士はその宝探しのお手伝いをしていると言ってもいいでしょう。もちろん仲良し夫婦の間でも、宝の基準や価値観が違って当然です。だから、意見が食い違って衝突もします。しかしそんな時初めてお互いを知り、理解できる瞬間があります。その瞬間が私は好きです。家づくりを通じて、心と心のふれあいの中で、本当に価値がある答えが見つかった時、それがいい家になる瞬間です。
もうお気づきだと思いますが、注文住宅で一番成功、満足できるご家族の第一条件は、そんな宝探しを、ワクワクしながら楽しめるご家族です。