『フリーアドレス』は今やオフィスデザインの業界では選択肢の一つとして定着してきた。最近ではABW(Activity Based Working)という時間軸にまで自由度を与える働き方も珍しくはない。フリーアドレスの特徴としては個人のデスクが割り当てられるのではなく、空間やスペースをその時の仕事の内容やニーズに応じて、個人が自由に選択する空間論。ですので、一人で集中したいとか、仲間と話ししながらアイデアを煮詰めたいとか、リモートワークなので静かな場所がいいとか、様々なシーンに応じて場所を選んで仕事をすることが出来る。これって実は、本来人間が持っている本能ではないかと思う。特に僕は生粋の自由を好む人間なので、お花見でシートを張る位置一つとっても、どこでもいいわけじゃなく、そこに張る理由と意義を無意識のうちに探っている。
だけど、会社で仕事するって当然いつもの机で、いつものように、見積も図面も、スケッチも、時にはお昼のお弁当も70cm×120cmの小さな世界の上でコツコツやるモンだと思っていた。現場に何ヶ月も何年も出ていて、永久空席状態にある空いたスペースを横目に見ながら、疑問にも持たずに、いつもの場所で仕事をする。それを常識と捉えている人がまだまだ多い中で、オフィスデザインは近年、進化スピードを増している。最先端のオフィスは自由で、包容力があり、やはり魅力的だ。売り手市場ってこともあるのか、各社の企業イメージアップと生産性向上を狙う目的もそこにはあるのだろう。
最近僕がデザインを手掛けたオフィスでは、『フリーアドレス』を提案。デザインポイントは、いかにスタッフのワークスタイルを把握し、そのシーンに応じた空間を創れるかだ。もう一つはフリーアドレスの弱点でもある、個人の収納スペースの整理とクリアデスク問題。
つまりは繰り返しになるが、〇〇君は何をするにもこの机でしてね。ではなく、『やること=activity』に応じて、いろんな空間を用意しているから、君は自由に使ってね。ということ。さて、住宅に置き換えた場合、前者と後者、どちらをあなたは選択しますか?
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